教組の花嫁
「何かご用でしょうか」
茶碗の残りを一口半で飲みきった小波が、口を開いた。
4畳半の茶室で、グレー地の着物を粋に着こなした百合葉が、微笑みながら小波を見詰めている。
「小波さん、着物はお嫌い」
百合葉が小波に尋ねた。
「いいえ。でも、着る機会がありませんので」
ジャージ姿でかしこまる小波が呟いた。
「教祖様はあなたの事を、君は和服が似合いそうだね、と言われたわね」
「私、似合いますかね」
「教祖様はあなたの美しさを見抜いておられたみたいね」
(千葉様は何が言いたいのだろうか)
小波は百合葉の次の言葉を待った。