教組の花嫁

 「私が差し出した女性、一ノ瀬さよりと言うのだけど、鬱になって実家に帰ってしまったの」


 「どうして一ノ瀬さんは、鬱になられたのですか」


 小波が百合葉に尋ねた。


 「彼女は美人だった。教養も申し分なかったわ。私が選んだ位だから、わかるでしょう。でも、教組様は手を付けられなかった。彼女、孤独、寂しさに耐えられなかったのかな」

 百合葉が一ノ瀬さよりの顔を思い浮べながら言った。


 「・・・」
 

 小波は一ノ瀬小百合がどんな女性なのか、自分勝手に思い巡らしていた。



 「それ以来、私は教祖様に女性を差し出すのは辞めにしようと思っていたの。でも、気が変わったわ」

 百合葉の瞳が一段と輝いた。


 「ええっ、どうしてですか?」
 「あなたに出会ったからよ」


 「そんなあ・・・」


 小波がとんでもない、という顔をした。





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