教組の花嫁

 「私は迷惑じゃないよ。むしろ、嬉しい位よ」
 「本当」


 北河の顔が笑顔になった。

 
 「本当よ」
 「ありがとう」


 「じゃ、キスしていい」
 「・・・」


 返事を聞く前に、北河が小波に軽くキスをした。


 拒否をしない。
 それが、小波の返事。

 北河は思いのほかキスが上手。


 甘い。
 それも、とろけるようだ。


 時間が止まったかと思うほど、二人は長い長いキスをそした。
 そして、二人は抱き合った。


 小波は北河に抱かれながら、母親の紗代の顔を思い浮かべていた。


 (お母ちゃん、これでいいでしょう。お母ちゃんの恨みを忘れていない事が、わかったでしょう)


 「お母ちゃん・・・」

 小波が北河に聞こえない位の小さな声で、かすかに呟いた。
 北河は、小波が母親の顔を思い浮かべながら自分に抱かれているとは、思いも寄らなかった。


 二人は求め合った。
 息も乱れるほどに、激しく激しく求め合った。


 道心の愛人という立場も、百合葉から言われている大奥の掟も、小波の脳裏には無かった。
 ただ、この一瞬に、小波は燃えていた。




 
 
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