教組の花嫁

 道心は二人が教祖室に入って来た時、異色の組み合わせに違和感を感じた。


 (二人に、どんな共通の話題があると言うのだ)


 道心は、二人の顔を交互に見て目をパチクリとさせていた。


 「二人揃って、何の用かね」
 「あんた、びっくりしたらあかんで」


 泰子は、興奮しているのか二人だけの気安い話し方をした。


 「凄い形相をして、いったい何があったと言うのかね」


 道心は、常々大した事も無いのに騒ぎ捲くる妻の悪癖に、嫌気がさしていた。

 「腰を抜かしたら、あかんで」

 泰子はブレーキの壊れた自動車のように、あるモノに向って突進していた。

 「何があったのだ」

 道心が、憮然とした表情で呟いた。



 「あんたの跡継ぎは、あんたの子と違うねんで」



 ほのかに聞いて以来、早く口に出したい情報を、泰子が思わず口から吐き出した。





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