教組の花嫁
 
 (本妻を追放して、自分が後釜に座る。そして、永心を教祖の後継者にして、教団の財産を自分の物にする)


 (悪く無い。この考えに勝る自分の生き方が、果たしてあるだろうか。いや、無い。絶対に無い)


 小波は瞬時にこの考え方に到達すると、自分の安売りだけはしたくないと思った。


 「君の考えは良くわかった。今日の所は出直すとするか。また、電話をする」


 道心はそう言って引き上げて行った。
 帰りの道すがら、道心は小波の言葉を反芻していた。


 「それじゃ、環境は前のまま。少しも改善されていないじゃないですか」


 道心は、この言葉を口に出して何度も反芻をした。


 (環境は前のままか。確かに、離婚に至るのは、まだずっと先だ。泰子は、まだ家に居座っている。小波から見れば、何も目に見えて変わっていない)




 (じゃ、目に見えて変わるには、どうすればいいのか。泰子でも追放するか。そうだ。この手がある。泰子を追放しよう)



(泰子を追放するのだ)



 道心は考えが決まると、足早になって教団に戻って行った。





 
< 225 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop