教組の花嫁
(本妻を追放して、自分が後釜に座る。そして、永心を教祖の後継者にして、教団の財産を自分の物にする)
(悪く無い。この考えに勝る自分の生き方が、果たしてあるだろうか。いや、無い。絶対に無い)
小波は瞬時にこの考え方に到達すると、自分の安売りだけはしたくないと思った。
「君の考えは良くわかった。今日の所は出直すとするか。また、電話をする」
道心はそう言って引き上げて行った。
帰りの道すがら、道心は小波の言葉を反芻していた。
「それじゃ、環境は前のまま。少しも改善されていないじゃないですか」
道心は、この言葉を口に出して何度も反芻をした。
(環境は前のままか。確かに、離婚に至るのは、まだずっと先だ。泰子は、まだ家に居座っている。小波から見れば、何も目に見えて変わっていない)
(じゃ、目に見えて変わるには、どうすればいいのか。泰子でも追放するか。そうだ。この手がある。泰子を追放しよう)
(泰子を追放するのだ)
道心は考えが決まると、足早になって教団に戻って行った。