教組の花嫁

 「教祖様。もしかして、小波さんに会われたのですか」


 百合葉の直感。


 「ああ。実は、戻ってくれと言ったのだ。だが、断れてしまってね。連れ戻す為には、それなりの環境改善がないとね」
 「小波様は断られたのですか」


 (これで奥様を、教祖様が追放する動機がわかったわ)


 (それにしても、小波という女は、想像以上に強かな女ね。私も彼女を甘く見ていたら、足元をすくわれるかも。用心しなくっちゃ)


 百合葉が小波のイメージを一新した。


 「離婚の結論が出るには、まだまだ時間が掛かりそうだから。いつまでもこのままというのもね」


 「教祖様の言われる事は、良く分かりましたわ。では、私にお任せ下さい。万事、うまく運んでみせますわ」
 「頼むよ。千葉君。君だけが、頼りだからね」


 道心が軽く頭を下げた。


 「わかりました。早速、奥様に会って引導を渡してまいりますわ」


 百合葉は教祖室を出ると、その足で、1階の泰子の家を訪ねる事にした。





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