教組の花嫁
ピンポン。
泰子がチャイムの音に気が付いた。
「誰かいな」
泰子が玄関に出た。
「何や、あんたかいな。何か、用事か」
泰子が、ドアを開けて迷惑そうな顔をして百合葉に言った。
「今日は、教組様のご命令をお伝えにまいりました」
百合葉が威圧的に応対した。
「何や、教祖の命令とは」
泰子が首を傾げながら問いただした。
「ここを早急に開け放して頂きたい、との事です」
「ええっ!、ここを開け放せてか。何でうちがここを出ていかなあかんのや」
「調停離婚でも、奥様は納得して頂けないご様子。裁判になりまして、同じ敷地内というのも・・・」
「うちは離婚はせえへんから」
「絶対にせえへんからな」
泰子の必死な声。
「教組様は離婚を決定されていますから」
百合葉は、表情を変えずに泰子に冷たく言い放った。