教組の花嫁
「いったいどこへ行けというのや」
泰子が泣きそうな顔で。
「お好きな所へ」
百合葉が小さく笑みを浮かべた。
「いややで。ここから出て行くなんて」
「今月中に退去をお願い致します」
百合葉が言葉に憎しみを込めた。
長年、百合葉は泰子から煮え湯を飲まされている。
(今こそ息の根を止めてやる)
積年の恨みを果たすのは今だ、と百合葉は思った。
「今月中。あと2週間も無いやないか」
「もし、こちらの願いをお聞き下さらない場合は、強制執行を致しますので、そのお心積もりを」
「強制執行?お前らは血も涙も無いんか。力付くでうちを、追い出すつもりか」
泰子が鬼のような顔付きになっている。