教組の花嫁
「今日は久し振りに骨休みをするか」
道心は疲れていた。と、いうより、疲れ切っていた。
教祖という役をこなす重圧で、とりわけ精神的に大きな疲労を感じていた。
時々、気が狂いそうになる自分を、何とかもうひとりの自分が抑え付けていた。
ガス抜き。
爆発寸前には、道心は女たちと酒で、やり切れない自分を、密かに癒すようになっていたのだ。
百合葉は道場に向かっていた。
2階に着くと、百合葉は左側の監視カメラのすぐ下で、瞑想している小波に近付いた。
人の気配で、小波は目をパチリと見開いた。
目の前に和服の女が立っている。
小波は思わず和服の上を見上げた。
女は最高幹部のひとりである、千葉百合葉だった。
(なぜ、教団の最高幹部が、自分の目の前にいるのだろうか)
小波は驚いて身を硬くした。