教組の花嫁

 「今日は久し振りに骨休みをするか」



 道心は疲れていた。と、いうより、疲れ切っていた。

 教祖という役をこなす重圧で、とりわけ精神的に大きな疲労を感じていた。

 時々、気が狂いそうになる自分を、何とかもうひとりの自分が抑え付けていた。



 ガス抜き。



 爆発寸前には、道心は女たちと酒で、やり切れない自分を、密かに癒すようになっていたのだ。



 百合葉は道場に向かっていた。

 2階に着くと、百合葉は左側の監視カメラのすぐ下で、瞑想している小波に近付いた。


 人の気配で、小波は目をパチリと見開いた。
 目の前に和服の女が立っている。


 小波は思わず和服の上を見上げた。
 女は最高幹部のひとりである、千葉百合葉だった。


 (なぜ、教団の最高幹部が、自分の目の前にいるのだろうか)



 小波は驚いて身を硬くした。





 
< 9 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop