“隣の不可思議くん”


「他人への思いやりも強かった・・。私自身も突然別れなくてはいけないとは思ってもみなかった。」


「別れを告げてから一度も・・?」


「あぁ・・突然、もう会えないと告げられた。理由は話してはくれなかったが・・風の伝えで名家の息子と夫婦(めおと)となったのは聞いていた。」



澄羅はとても悲しい顔をしていた。今にも泣き出してしまうんじゃないかと言うほどに。人間は誰しも弱い。一人でなんて生きてはゆけないのだ、そう思ったら華乃は彼を抱きしめていた。


「澄羅さん・・・とてもお辛かったでしょう?大好きな方の隣にいれないのはとても寂しいです・・悲しいです・・」


ぽろぽろと涙がこぼれた。皐月さんもきっと辛かっただろう。夢の中であんなに幸せそうに笑っていたのだ、この人と一緒にいたかっただろうに。


「私のために、泣いてくださるんですか?」


穏やかに笑いながら涙を拭ってくれる彼はとても綺麗だった。


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