恋を奏でて
その男性の顔を見たかった。
けれど、辺りの光が足りず全く見えなかった。
「ねぇ、亜由美。さっきの人もバイトの人?」
薄暗い廊下を歩きながら亜由美に尋ねた。
「あの人はね、ここでライブに参加する人。交代でやってるんだぁ。」
「へぇ。」
ライブに参加する人。
じゃあ、あの人も歌うのかな?
考えながら、亜由美の後ろを歩く。
廊下はやっぱり薄暗く、狭かった。
だんだんギターやベースの音が聞こえてきた。
ドラムの音や観客の盛り上がっている声も聞こえる。
あたしの期待や緊張がどんどん強くなる。