眠り姫の唇


………‥



「落ち着いたか?」


「…はい、すいませんでした。」


瑠香はそっと岩城から離れた。


結構な時間、ただ抱きしめてもらっていたような気がする。



だいぶ頭も落ち着いていた。



「すいません、仕事中に…。」


「いや、休憩とってなかったからちょうどいい。」


瑠香は顔を隠しながら頭を下げる。


「俺に用があってきたんじゃないのか。さっきオフィスのドアの所に立って俺を見てただろ。」


「あ、」


瑠香は足元に落ちていたクリアファイルを拾う。


「これ、前川先輩から…」


岩城はスッと受け取り、中身を確認する。


「…アイツ。」


途端に険しい顔になる岩城に、瑠香は少し焦った。


「…なんの書類だったんですか?」

さっきのブチギレ岩城がまだ頭の隅に残っている瑠香は、これ以上この人を怒らせないでくれと、前川を呪った。



「いや、周りの書類は全然関係ないカモフラージュだ。見ろ。」


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