眠り姫の唇
「(ていうか、言っといてよね!カカリチョウ!)」
さすがに重役クラスは頭に入っているが、各階の係長全員はさすがに把握していなかった。
庶務の人達はそれぞれの階に出入りはしているが、その他は本当に部署同士の交流が少ない会社である。
会社全体の忘年会だとか、そんなぐらいだ。交流があると言えるのは。
本当に、
あんな事さえなければ、
岩城と関わる事も一生無かったであろう。
◆
「あれ?高江、あがり?」
「はい、なんとかまとまりました。プリントは明日します。お先です。」
前川に軽く挨拶し、オフィスを後にする。
…薄暗い廊下を一人で歩くと、夕方の事がフラッシュバックのように蘇ってしまう。
後から思い出せば出すほど、恐怖心が勝ってくる。
気持ち悪い。
岩城が来ていなかったら、本当に、どうなっていただろう。
考えただけで震えが走る。