眠り姫の唇
「というか、さっきのやり取りで向こうもほとんど気付いているだろ。」
「や、え?」
「俺がわざわざ車停めて迎えに来て、しかもお前の下の名前を呼んだ。前川は特に分かってんじゃないか?」
信号が赤になると、岩城はスッと瑠香を見つめ、そっと手を伸ばし顔を触る。
頬からすすすと指先が首をなぞり、それだけで瑠香の体が震えた。
「…何スカーフなんか巻いてるんだ。」
そう呟いて、岩城はパサッとスカーフの端を引っ張り、瑠香から奪った。
「あ!何するんですか!」
「そのままで居とけって言っただろう。なんで隠す。」
「そりゃ隠しますよ。会社何ですから。」
「今からプライベートだ。」
スカーフを取り上げられ、スースーする首を瑠香は何となく片手で触った。
「俺のものだって、見せつけておけ。」
俺のもの。
瑠香はその言葉に、自然と聞きたかった事が口から出てしまった。
口から出た後、後悔する。
「岩城さんって、私の事どう思ってるんですか?」