眠り姫の唇
それはそうか、と、頭の隅では理解していた。
出張は明日の早朝だ。
今日は多分、連れて帰られる事もないだろう。
それでも。
「(ふぅ…)」
いつもよりも確実にメール受信がないか確認する自分に乾いた笑いが出る。
“桜子様、無理やり自分もくっついて行くように仕向けたらしいよ。”
リサの言葉が勝手に脳内でリピートする。
…お昼から帰るとき、ばったり一階のホールで若い女子社員に囲まれた岩城と遭遇した。
キャーキャー言っている女の子達に、岩城はめんどくさそうに「ウルサい。」と言っただけだったが、瑠香はそんな光景初めて見た。
ただ黙って通り過ぎようとする瑠香に、リサが焦って話しかける。
「ちょっと、いいの?多分今まで厳しいイメージしかなかったからこっそりファンが多かったんだと思うけど、噂のせいで女の人にも興味あるんだーと思われて、これからああいうの増えると思うよ。牽制しとかないの?」
「…私のものだって堂々といえるなら、そうしてたかもね。」
でも、未だに岩城の本音は分からない。