眠り姫の唇
瑠香は複雑な表情のまま、エレベーターに乗りこんだのであった。
久しぶりに駅までとぼとぼ歩く。
走る予定もないから靴ずれを起こす心配もない。
だから誰かさんに抱き上げられて拉致られる心配もない。
「……。」
変な感じなのだ。
じわりと黒いドロドロに追いかけられているような。
この感情は、いったいなんなんだろう。
なんと呼べばいいのだろう。
自分のアパートに着いても、このもやもやはなくならなかった。
適当にパスタをゆでて、ホワイトソースを作り、一人で食べる。
テレビを点ける気にもならなかった。
…こんなに静かだったっけ。
瑠香は静かにパスタを口に運びながら、親しみ慣れた部屋をぐるりと見渡した。
どこも変わってない。
変わってないけれど。
…この寂しさはいったいなんなんだろう。