眠り姫の唇


次の瞬間には、瑠香は財布を片手に家を飛び出してきた。


ムカつく。


なんかムカつく。



そもそもあんな改まって出張を告げるぐらいなら、同行者に女性がいることぐらい言ってくれたらいいじゃないか。


瑠香は夜道を早足でかける。


しかもその女性が桜子さんとは。

なんで。

よりによって自分を突き飛ばした女なんだ。

あんな盛大に転けたのは久しぶりだ。


めちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど!


瑠香は眉間にシワを寄せたままバンっと電車に飛び乗った。



ガタンゴトンとネオンが流れる黒いガラスに自分の険しい顔が映る。


どう考えても今から男に会いに行く女の顔ではない。


電車に乗っても岩城に対しての言いがかりにも近い不満は次から次へと溢れ出ていた。







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