眠り姫の唇
頭が冷えるほど、自分の行動が不可解だった。
まるで、浮気を責めに来た彼女ではないか。
好きだとも言われたこと無いのに。
そして自分も好きだと言った事もない。
岩城の事を、自分は好きなのだろうか。
…なんなんだろう。よくわからない。
でも、あやふやのまま無理やり自分は彼が好きなのだろうと思い込みたくはない。
…もう、そういうのは繰り返したくないのだ。
大学の頃、彼が出来た。
なんとなくお互い好きなんだろうという感覚で、とんとん調子に付き合う事になり、自分は多分彼が好きなんじゃないかというあやふやなまま、手をつなぎ、デートをし、キスをし、最後までした。
彼からは降るように愛の言葉を囁かれた。
好きだよ。
好きだよ。
愛してる。
好意を寄せられているという事に悪い気はしなかったが、なんだかそのペラペラした響きに、瑠香は違和感を覚えていた。
自分の口からお返しで出て来る言葉も、薄っぺらくて少し気持ち悪かった。