眠り姫の唇


大学3年になってからはアホらしくて恋愛自体しなくなった。


学習能力の低い自分にも嫌気がさしていた。



そうしないと嫌われるという脅迫概念だけで、私も好きだと言ったり、身体を許したり、そういう事にはうんざりしていた。


恋愛に何を求めていたのか。


どの道、今までの体験ではソレを手に入れることは出来なかった。


とりあえず、彼らはあんまりよろしくない男だった事だけは、周りの幸せそうな友人を見て判別出来た。


悔しいのは、そんなしょうもない男に少しでも時間をさいていたということだけ。


もう、名前すらあやふやだけれども。




ぽつ、ぽつ、と音がしたかと思ったら、急に雨が降ってきた。


真っ暗な世界に街灯だけが陳腐に光っている。


幸い、扉の前は濡れないが、気温が急に下がって、瑠香は少し身震いした。


もう夏なのに、寒い。




…岩城さん。




瑠香は部屋の住人を思う。





何年も一人を思い続けて来た岩城さん…。



岩城に、好きかどうか分からないと言われたとき。やっぱりね、という落胆の気持ちと、何故か嬉しい気持ちがしたのだ。


自分が今まで恋愛に求めていた何かが、岩城の中にはちゃんとあるような気がした。



…岩城さんが、ちょっとした好意をすぐに好きだとか愛してるとか、そういう風に置き換えない人で良かった。


ちゃんと好きの意味を理解している人で良かった。



本当に良かった。



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