眠り姫の唇
ポタポタと、濡れた黒い傘から水滴を落としながら、岩城が驚いた顔をして近付いてくる。
「歩いてきたのか?」
岩城はぐいっと瑠香を立たせながら、穏やかではない彼女の顔を覗き込む。
「どうした。なにかあったのか?」
鍵をガチャリと開けながら後ろに話しかける。
しかし瑠香は口を閉ざしたまま、一言も発しなかった。
バタン。
無理やり扉を閉め、瑠香を強引に中に入れる。
「おい。」
二の腕に触れると、ひんやり冷たかった。
いつからあそこに座り込んでいたんだ。
連絡ぐらいくれたら良かったのに。
岩城がそんな事を思っていると、ぼんやりしたままの瑠香が、急にふわりと前に倒れるように岩城の胸に頬を寄せてきた。
ぽすっ
「……ーーー‥。」