眠り姫の唇
…岩城さん。
瑠香はびっくりしていた。
自分はこんなにお手軽な女だったのか。
岩城が駆け寄り、瑠香の腕に触れた時点で、今までもんもんとしていた不満がどこかへ消えてしまったのだ。
具体的には決めていなかったが、あれほど腹を立て、文句の一つもいってやろうと意気込んで来たのに、岩城の顔を見ただけで、岩城の声を聞いただけで、なんだか全てどうでも良くなってしまった。
気がついたら、岩城にもたれていた。
頬にあたるYシャツの感触が心地いい。
自分の腕を掴む大きな手に、全てを委ねてしまいたい。
瑠香はいつもの岩城の香りを感じたくて、岩城の胸にもたれながらゆっくり深呼吸する。
「……っ。」
しかし、
身体全身で感じたのは、いつもの香りではなく、
嗅ぎなれない女物の香水の匂いだった。