眠り姫の唇




金曜日。


岩城が出張へ行ってから4日目。

瑠香の生活は非常に穏やかに過ぎていった。


起きて、洗濯して、軽く掃除して、食べて、仕事をして、帰って、 ご飯食べて、お風呂に入って寝る。それの繰り返し。


岩城に会うまでの日常に帰って来た。


しばらく大きな会議の予定もないし、通常業務に無心で取り組む。



…岩城さんは今頃桜子さんとロスか。


そんな事をふと思うが、前みたいにそこまで不安にならない。


…不安に思う事自体へんな話なのだが。


もう、ほとんど確信はしているものの、とうとう、岩城を玄関先で見送るまで、その言葉は出て来なかったあの時を思い出す。


今更な気もするし、改めて形にするのもなんだか気恥ずかしい。


しかも、万が一あの岩城に鼻で笑われたらと思うと、どうも喉の奥で引っかかって、最後まで出て来なかった。


…またの機会にしよう。


身体を繋げておいて、瑠香は変な所で足踏みをする。


元来、恋愛は得意ではないのだ。


気恥ずかしさと妙なプライドが邪魔をする。




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