眠り姫の唇
「………すまん。」
そうぼそりと言葉を落として、岩城はそそくさと部屋の奥に消えていく。
「……。」
乱れる息を整えながら、瑠香はそーっと廊下を歩き、奥の部屋を覗き込んだ。
「…。」
ベッドに腰を下ろして、大の大人が頭を抱えている。
顔は見えないけれど、黒髪からひょこっと覗く耳が真っ赤なのを瑠香は確認して、自然と口元が緩んだ。
ペタ ペタ ペタ ペタ…
ゆっくり岩城に近付き、ちょこんと隣に腰を降ろす。
ベッドが少しバウンドしても、岩城は全く反応しなかった。
そーっと顔を覗き込むような姿勢を取るが、岩城はなかなか表情を見せてくれない。
「…岩城さん。」
「……。」
「…おーい、岩城さーん?」
「…今は何も言うな。」
そう言って反対側を向いてしまう岩城がどうしようもなく可愛くて、瑠香は笑いを噛み締めるのに必死になった。
ぴとっと大きな背中に両手を乗せる。
温かい。
肩甲骨をゆっくり撫でながら、瑠香はそっと岩城の耳に唇を寄せた。
「…ヤキモチ妬いちゃったんですか?
岩城係長。」
「!」