眠り姫の唇

「ちゃんと言いましたよ。同期と食べてきますって。」


「男とは聞いていない。」


ムスッとして岩城を見上げながら瑠香は思わず口走っていた。


「自分は桜子さんと二人でアメリカに一週間も行ったくせに…」


ボソッと言ってしまった後、瑠香は大いに後悔した。


“仕事”なのだ。


岩城は何も悪くない。


でも、


やっぱり感じてしまうこの不平等感。


こっちは“桜子”の事でこんなに右往左往しているのに、なんで自分だけ…。

ただ同期と食べに行っただけでこんなに攻められる形になってしまうのか。


考え込むと、段々イライラしていた。


そうだ。



そうなのだ。



あんなゴミまで見せられて、よくこの男を怒鳴り散らさなかった事か。


むしろ自分を褒めてあげたいぐらいだ。



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