眠り姫の唇
意を決して扉を開けた。
とぼとぼ廊下を歩きながらそっと部屋に情けない顔だけを突き出す。
岩城は静かにベッドに腰掛けていた。
「…出たのか。」
ボソッとこぼすように岩城がつぶやいて真っ直ぐこちらを見る。
「あの、岩城さん…、その…さっきは…」
申し訳なさそうに瑠香が口ごもる。
それを最後まで聞かずに岩城は瑠香を手招きした。
その大きな手に誘われるがまま、瑠香はフラフラ蝶のように岩城のそばまで歩く。
「瑠香。」
…なんで、
この人が自分の名前を呼ぶと、こんなに優しく聞こえるのだろう。
なんで特別ななにかに聞こえるのだろう。
「あの、さっきはすみませんでした…。」
岩城の隣に腰掛けながらボソッと漏らす。