眠り姫の唇


じろりと不服そうな岩城の瞳に捉えられ、瑠香はじりじりベッドの上を後ずさった。


「や、ほら私、今、焼き肉臭いですし。」


「風呂に入って来たんだろ?今は良い匂いがする。」


そういってうっとりしたように肩に鼻を擦り寄せられ、身体の奥がぞくぞくした。


「でも口は明日にならないと直らないですよ。」


一応さっき念入りに歯は磨いたが、ニンニクは相当手ごわいはず。


瑠香の中で今日は岩城とはキスしない予定なのだ。


予想外の展開に、瑠香はわたわたする。



それでも岩城は無理やり瑠香の細い手首を掴み、こじ開ける。



眉を切なそうに寄せながら瑠香は懸命に顔を背けた。


腕は両方とも岩城の大きな手に捕まってびくとも動かない。


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