眠り姫の唇
「海外に飛ぶのは仕事でだし、サクラとは今回の出張で初めて一緒に飛んだからな。1日早まって仕事以外の話なんてする隙さえなかったし、飲み会では俺はなんでか上司とばっかり話があってな。下の奴らは怖がって近寄ってこないし。そういえばあんまりサクラとは会話したことないな。酒はついでくれるけど。」
上司との会話を思い出すように岩城が少し笑う。
どんな難しい会話を繰り広げているのか。
瑠香には想像も出来ない。
「岩城さんって、飲み会で後輩を周りにはべらせてるんだと思ってました。」
「なんだそれ。」
可笑しそうに笑って、岩城は瑠香の髪を撫でる。
「そもそも9階の飲み会は独特なんだ。仕事の続きみたいな話ばっかりするし、上の層と後輩達の席も少し離れている。俺は途中から9階に飛ばされたからな。いきなりそっちの席に座らされて、まともに後輩達とプライベートな会話なんてしたことないな。」