眠り姫の唇


少し遠くを見つめながら岩城は笑った。


「…9階に入った頃、7階の奴らが恋しくてな。少しホームシックな感覚になってた。」


「岩城さん、寂しがり屋ですもんね。」


コツンと頭を小突かれて瑠香は優しく笑う。


「仕事ばっかりしてたな…。まぁ、今もあんまり変わらないが。」


「でも、信頼はされてましたよ?」


少し9階の様子をみただけで、良く分かった。


岩城は全員から一目置かれている。


「そうなのか?」


きょとんと答える岩城が意外で瑠香は微笑みながら岩城の胸にすり寄った。


「はい。見てれば分かります。」


廊下で見かける岩城は、いつも後輩に跡を追われて頼りにされているような感じだった。


恐れられながらも、信頼されている。


実に岩城らしい。





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