眠り姫の唇


な、なんなんだいったい…。


不機嫌そのものな隣の男に瑠香は冷や汗を感じながらさり気なく話しかけた。



「…珍しいですね、岩城さんが早く終わるの。」


「…無理やり終わらせてきた。」


「そうなんですか…。」



「…。」



「…。」



「…。」



や、やりにくい。


重い空気の中、瑠香は自然と背筋を伸ばす。


訳も分からず廊下に立たされた生徒の気分だ。


なにか知らぬ間に、自分がやらかしてしまったのであろうか。

少なくとも仕事中に岩城に失礼を働いた覚えはなかった。


朝も機嫌良くリゾットを食べて笑顔で車の扉を閉めた記憶ならある。


なんなんだろう。



じっと車の流れを見つめながら、岩城がいつもの道とは違う方向にハンドルを切ったので、瑠香は不思議に思った。



「どこか寄るんですか?」



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