眠り姫の唇
「そうなのよね…。あの人、すぐに付き合おうって言っちゃって…どう責任取るつもりなのかしらね。ねぇ?」
同意を求めるように言われても、瑠香は首を全く振らなかった。
「さすがに、今回はだいぶ浮気相手の高江さんに入り込んでるようすだから、私も諦めて彼に別れを切り出しだの。この前の出張の時にね。そしたら、“お前だけは手放したくない”って…。」
頬を染めて、桜子は目を伏せる。
少しでもそんな状況を想像するだけで、瑠香は胸が信じられないぐらい傷んだ。
でも、
でも、そんなことありえない。
「…それって、全部あなたの妄想の話ですよね?」
辛そうに桜子を睨みながら、瑠香はぐっと手のひらに力を入れた。
そんな話、信じない。
「…そうよね、いきなり言われても信じられないわよね。」
可哀想な子でも見るように桜子は続ける。
「でも、私はね?いいのよ。…それで。他に女の人が居ても。慣れてるしね。出張の時…激しかったなぁ。彼。私から別れ話持ちかけたのも初めてだったしね。失うと思ったから、必死だったのね。何回も求められたわ…。」