眠り姫の唇
「そうね…」
桜子はふわりと宙を見つめ、うっとりするように語りだした。
「氷のように洗練された人だと思うわ。誰も寄せ付けない、触ると怪我でもしてしまいそうな、鋭利な人。そしてそれ以上にダイアモンドのような魅力を兼ね揃えている男性ね。誰もがあの人を手に入れたいと願っていると思うわ。…ふふっ、ちょっと大げさだったかしら。仕事も出来るし、かなりの有望株よね。周りの女性からみても。」
優越感に浸るようにそう喋り終えて、桜子は瑠香を見つめる。
「……。」
瑠香はいきなり冷静になっていた。
熱がスーッと体から引いていき、怒りもなくなって、ただ、真っ直ぐに彼女を見る事が出来た。
「でも、ごめんなさい。彼は昔も今からも私のものなの。だから諦めて。お願い。彼はこれからもあなたに愛してるって嘘をつくと思うけど、高江さんも、もう私の影がチラついて、純粋に彼を思い続けられないでしょう?だから、これでこんな不毛な恋は止めて、新しい彼でも作って?私に出来る事なら協力するから。彼からの本当の“愛”がもらえるのは、私だけなの。」