眠り姫の唇
瑠香は、カマをかけてみることにした。
…散々かき回してくれた、お返しだ。
「…その中に、何が入ってるっていうんです?」
「簡単な事よ。あのキャリーバック、岩城さんは出張に持って行ったのよ?出張先で起こった“何か”の証拠でも入ってるんじゃない?見に覚え、ない?」
先ほどと同じように、勝ち誇ったような顔をした桜子が腕をくむ。
瑠香は思った。
あ。あの電話もやっぱりワザとこの人がかけてきたんだ。
分かり切っていた事だが、改めて確信すると、少しだけ清々しい。
もう、瑠香の目には、目の前の大人っぽい女性が、ただ欲しいものが手には入らなくてダダをこねている単なる子供にしか見えなくなっていた。
少し悪知恵のついた、子供。
見た目で人は本当に判断出来ない。
ずっとつきまとっていた恐怖心がスーッとなくなっていく。
よくよく考えれば、桜子の話は支離滅裂で、全く辻褄の合わない事ばかりなのだ。
瑠香は徐々に自信を取り戻して行く事が出来た。
大丈夫。
負けない。