眠り姫の唇
毎日と言っていいほど聞き覚えのあるその重低音。
聞き逃せるはずがない。
瑠香はそのままどうするか考え、やっぱり悪いと思いながらもその場にとどまる事に決めた。
「……本当になにもないのよ…。……」
扉越しで聞きにくいが、確かに女の人の声も聞こえる。
この声は…、
「(前川先輩…。)」
瑠香は自分の心の声にドキリとした。
佐倉の時より嫌な汗が出る。
二人にはなにもない。
なにもないと分かっているのに。
瑠香はそっと扉の隙間を開けた。
こんな場面みても、何一つ良いことなんてないのは分かっていた。
どうせ何もないか、自分が適当に誤解して、勝手に傷付くか、そのどちらかだ。
でも、
とめられなかった。
瑠香はそっと扉の隙間に目を合わせる。