眠り姫の唇


「(馬鹿だな私…。)」


本当に馬鹿だ。


さっきまで、勝ったと思っていたのだ。


佐倉に負けなかった事にいい気になって、勘違いをしていた。


ここにいたじゃないか。



絶対に勝てない相手が。



ずっと、ずっと、心の奥底にあったのに、見てみぬふりをしていた。


もし、


前川が真っ直ぐ岩城と向き合う事があったなら、多分自分にはかなわないだろうと。


そんな不安があったのに、今まで気にしないふりをしてきた。


こんなにあっけなく、思い知らされるなんて…。






情けない。


足に力が入らない。



その場に座り込んでしまいそうな自分の体を、残ったわずかな気力だけでなんとか支える。



はぁ…。




すると、扉の向こうからパタパタとこちらに向かってくる音が聞こえて、瑠香は反射的に隣の給湯室に逃げ込んだ。




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