眠り姫の唇
………‥
“別に気の張るところじゃないから”
その言葉を信じて、瑠香はラフな格好にノーメイクで岩城の後をついて行く。
車を使用しなくても行ける距離。
どうやら近場にあるらしい。
夜道を岩城とこんな格好でぶらぶら歩くなんて、3日前まで考えた事もなかった。
Tシャツ姿の岩城はスーツの時よりも格段に若くみえてびっくりする。
良い匂いがしてくると、岩城は自然な動作で瑠香の手を取り、こっちだと説明する。
瑠香も瑠香でその手を特に振り払おうともせず、素直について行った。
「お!修ちゃん!今日は早いね。仕事早く終わったのかい?」
「ああ、急いで終わらせてきた。こいつがウルサいからな。」
屋台のオヤジさんがニカッと嬉しそうに笑う。
「なんだいしかも可愛い子ちゃんなんか連れて!修ちゃんもとうとう犯罪者だね!」
「え?ああ、こいつ別にそこまで若くないんだよ。」
「オヤジさん、いっちばん高いラーメンに山盛りトッピングしてください。」
じとっとした目で岩城を睨み付けながら瑠香が注文する。