眠り姫の唇


あそこ一応駅前なんで家賃も高いし、と瑠香はレタスをシャキシャキ食べながら喋る。


「ものを飲み込んでから喋ろよ。」


「喋らせてるのはどこのどなたですか。」



岩城もフォークにハムエッグを突き刺し、豪快に口に運ぶ。


「あ、でも、ただ食べたいもの食べてるだけなんで、ヨーグルト1パックで済ますときもありますけど。料理とは言えませんね。」


「…1パックって、あの1パックか?!」


「ん?そうですけど。…何か。」


岩城は呆れたように目を閉じ、残りのサラダをガツガツ口に入れる。



「うまかった。ご馳走さま。」


そう言いながら岩城は食器をキッチンに運んでいく。

どうやら洗い物はしてくれるらしい。

スポンジ片手の男をチラリとみて瑠香は思った。


意外と良い男じゃないか、岩城修一郎。



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