眠り姫の唇
一応初めてお越しになるお客様に飲み物をだす。
フェルト素材のりんご型ソーサーをじっと見つめ、また部屋をキョロキョロ見回すお客様。
「子供っぽい部屋だな。」
「………。」
ガスっ!と音を立てて乱暴にお茶菓子を机に置き、瑠香はパタパタと狭い部屋を出る。
「もう勝手に好きなようにしといてくださいね。テレビのリモコンもここですから。私洗濯物回して来ます。あ、掃除機かけていいですか?」
しばらくしてウィンウィンと洗濯機が回る音がして、狭いキッチンの方からもトントンと包丁の音が聞こえてきた。
岩城はテレビもつけず、その音に耳を傾ける。
岩城は、なんだか不思議と懐かしい気持ちになった。
「何作ってるんだ?」
「あれ?岩城さんテレビ見ないんですか?」
瑠香は包丁を使う手元から目線を外さず、岩城に話しかける。
トントントン…
「もう1時過ぎてるんで流石にお腹減っちゃって。ごはん、冷凍してるのしか用意してなかったので、チャーハンにでもしようかと…い、岩城さん…?」
瑠香の話を半分だけ聞いて、岩城はそっと瑠香の腰に手を回した。