眠り姫の唇
なんて極道なセリフだと思いながらも瑠香はその腕から逃れようと必死だ。
「も!さっきからなんなんですか!一人が嫌なんて子供ですか!」
「!」
「それに誰も一緒にいたくないなんて言ってません!」
岩城に組み敷かれながらも、瑠香はキャンキャン吠える。
しかし、瑠香の眼には若干涙が溜まって来ていた。
「ただよく分からなかっただけですよ。なんでこんな私とそんなに一緒に居たがるのかが…。それでちょっと、…その、なんだかよく分からない不安が…。」
「…。」
「なのに岩城さんは私に触ってくるばかりで…。この前、前川先輩忘れられないって言ってたじゃないですか。だから私…」
瑠香はいつかの朝の言葉を思い出していた。
“そんなすぐに忘れられるわけないだろってお前にいったら急に怒り出して…”
「自分で言ったのかなんなのか知りませんけど、やっぱり私…
前川先輩の身代わりは…嫌です。」
ベッドに縫いつけられたまま、瑠香は不覚にも涙を流してしまった。
喋りながら自分でもやっとこのもやもやの正体が分かった。
岩城にとって、誰でもいい存在になるのが嫌だったのだ。
適当な都合の良い女でいるのが嫌だった。
前川の代わりの、どこの誰でもいい女。
それが悲しくて仕方がなかった。
「…。」
しばらく無言で瑠香の話に耳を傾けていた岩城は、
ゆっくり瑠香に触れるだけのキスをする。