気がつけば愛でした
「ねぇ静奈ちゃん、今度また食事いかない?」
「えっ!?」
「この間の返事、そろそろ聞かせて欲しいなぁ~なんて。」
無邪気に笑う上村に静奈はかなり焦った。
このシチュエーションでそんなこというなんて。
背中を向けているとはいえ、目の前に高柳がいる。
3人しかいないエレベーター内では嫌でも会話は聞こえてしまうのだ。
「いいでしょ?」
「か、上村さん。その件はまた後日で…」
ここでする話ではないし、したくなかった。
何より高柳に聞かれたくない。
そう思っていると幸いにもエレベーターは営業課のフロアにつく。
「わかった。じゃぁ、また。」
「はい…」
そう言って笑顔で降りていく上村に返事をする。
チラリと高柳を見たが、高柳は一度も静奈を振り返ることはなかった。