気がつけば愛でした



座敷から少し離れた廊下に出てホッと息をつく。


なんだかやたら緊張する場だなぁ。

社長どうしの食事会だからというわけではない。
それ以外で、だ。


グッタリした気分で柱に寄りかかり庭を眺めていると、人の気配がして顔をあげる。



「どうした、気分でも悪いか?」

「高柳さん…。」



ドキッとして柱から身体を起こす。



「まだ二日酔いか?」

「う…いえ、もう大丈夫です。…昨日はすみませんでした。」



高柳から昨日の話題に触れられ、気まずい静奈はもごもご話す。



「昨日の覚えてる?」

「えっと…少しだけ…」


はっきり覚えてます。


しかし恥ずかしくて言えなかった。



「お前って酒入ると甘えるよな。」

「っ…あの…本当にご迷惑をおかけしまして…」
「別に。電話したのは俺だし。」



その素っ気ない返しに静奈は言い返せなかった。
やはり昨日こと嫌な気持ちになったのだろうか。


「…あの「上村さんと2人で会ってんの?」

「え?」



上村さん?


突然の名前にキョトンとしてしまう。



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