気がつけば愛でした
秘書室に戻ると、貴子が静奈を待っていた。
どうやら今、関谷部長が社長室に呼び出されているらしい。
高杉秘書が付くから貴子と静奈には退社命令が出ていた。貴子曰わく、帰社時間を過ぎているし、社長なりの関谷部長への配慮だろうとのことだった。
静奈は社長室の事も気になったが、素直に従う事にした。
貴子に挨拶をし、エレベーターで降りる。
ロビーにまだ2人がいるのでは、と思ったが、もう2人の姿はなかった。
ロビーを抜けた瞬間に涙が滲んでくる。
泣かないと決めたのに…
「静奈ちゃん?」
俯いているとポンと肩を叩かれる。振り返ると上村が立っていた。
「どうしたの?」
「上村さん…」
「何かあった?」
心配そうに覗き込む上村にさらに涙が溢れて流れ落ちてきた。
ここじゃぁ話が出来ないからと、上村と場所を移動することになった。
上村の優しさが今の静奈には沁みた。
以前、高柳にされていた忠告など忘れるほどに――――……………