気がつけば愛でした



そこには静奈の見たことがない上村がいたのだ。

いつものあの人懐っこい笑顔はない。

黒い何かが渦巻いているように見えて静奈は怖くなった。


部屋を開けると放り込むように静奈を中に入れる。

静奈の腕を掴み、グイグイと中に引っ張っていく。



「いい部屋でしょ?知ってる?ここのホテル、鮫島社長の従兄弟が経営してるんだって。俺だから借りれたんだよ。」

「か、上村さん…」

「何?誘いに乗ったのは静奈ちゃんだよ。」

「でもやっぱり私…」

「アイツのこと忘れたいんじゃないの?」



ベッドルームに連れてこられ、そう言われる。

静奈は思わず黙ってしまったが、やはりこれは違うと思った。



「ごめんなさい。やっぱり私帰ります。」

「この状況でハイ、ドーゾとは言えないんだよ」


そしてドンッと静奈をベッドへ突き飛ばし、馬乗りになる。



「上村さん、やだ!」

「聞こえない。案外忘れられるかもよ?」

「嫌!止めて下さい!」


必死に暴れるがお酒のせいか、うまく手足に力が入らない。

そんな静奈を組み敷いた時、頭の上に転がった静奈のバッグから携帯がけたたましく鳴り響いた。

当然無視していたが、何度も鳴り続ける携帯を上村は舌打ちをして取り出す。



『もしもし、橘か!?』



電話から聞こえてきた声に上村はニヤリとした。 そして静奈の口を手で塞ぐ。



「静奈ちゃんなら俺といるよ、高柳。」



そう言った上村の下で静奈がビクッと震えた。



『上村っ』

「先輩を呼び捨てすんなよ。」

『橘から離れろ。何かしたら許さない。』



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