気がつけば愛でした
「初めは会社の漏洩事件を知ったのがきっかけよ。あの会社は、私が関わってはいないけど、息子の会社だもの。心配になってね。現状を調べさせたわ。」
圭子は小さく微笑んで“親バカよね”と言った。
「その時に調べてくれた内容には、暁斗が副社長の就任をある人物にさせようとしていた。それが…」
「高柳さん…だったんですね?」
静かに問いかけると、圭子は小さく頷いた。
「暁斗が高柳さんを大学時代から可愛がっていたことは知っていたの。暁斗には再三付き合わないよう忠告したわ。だからまだ2人が繋がっていたことが私には許せなかった。高柳さんが主人の会社に入社していたことも許せなかったわ。いつか彼が息子の地位を奪うと思ったわ。」
圭子の口調は落ち着いているものの、時折、苦しそうな表情を見せる。
「高柳さんは、主人が他の女性に手を出したことで産まれた。主人は彼を認知したものの、会うことはなかった。それは主人なりの私への罪滅ぼしだったわ。でも私は主人に裏切られた気持ちが強かった。彼女が亡くなったと聞いても、私は彼女たち親子と主人が許せなかったのよ」