気がつけば愛でした


掴まれた腕を妙に意識してしまう。

急にどうしたのだろうか。



「あの…?」

「……いや、お疲れ様」


スッと目を逸らし、手を離した。


車から降りて、マンションのエントランスに入り、振り返ると高柳が車を発進させて行った。


静奈はそれを見送りながら、そっと掴まれた腕に触れる。


大きな手だった。
静奈の腕をスッポリ包むくらいに。

その手と熱を思い出し、胸がキュッとなる。


静奈はそんな自分に戸惑い、振り切るように部屋へ向かった。









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