気がつけば愛でした
「飯に行きたいとこだけど、悪いな。」
冗談っぽく笑ってみせる。しかしーー…
「なにも今から戻らなくても…」
相手との話が弾み、終了予定時間は大幅に過ぎていた。高柳だって相当疲れているだろう。なのにまだ仕事をするというのか。
「何?俺ともっと居たかった?なんならウチくる?」
からかうような笑顔を向けながら、赤信号で止まったタイミングで助手席のシートに腕をかける。
「ち、違います!そうじゃなくて…!」
赤くなる顔の前で慌てて手をふる。
そんな静奈にククッと笑った。
「面白れぇ奴。」
「高柳さん!」
静奈が膨れると、いつの間にか見なれたマンションの前まで来ていた。
お礼を言ってシートベルトを外す。
「あの…」
「ん?」
「無理…しないで下さいね?」
控え目にそう言うと、高柳は驚いたように一瞬、目を見開く。
何だか急に恥ずかしくなった静奈は「お疲れ様でした!」と急いで鞄を掴んだ。が、
グィ。
その腕を掴まれる。
振り返ると高柳が真っ直ぐ静奈を見ていた。
「高柳…さん…?」