ワケあり!
 迎えのバンに乗り込むと、中には五人いた。

 袴姿の、がっしりした男二人が、アキの弟たちだろうか。

 問題は、残り三人。バンの後方スペースいっぱいに、銃火器を並べている。

 しかし、それらは旧式に見えた。

 大事に使い込まれてきたのか、美しく磨かれている。

「銃砲隊の一族です…こんなことに呼んで、喜ぶ人間はここだけですよ」

 くっと、アキが笑う。

「人数制限しないなら、あと十人はきたぞ」

 旧式とはいえ、バズーカまである。

 その砲身をなでながら、若い男がにやりと笑う。

「武術隊と違って、銃砲隊は活躍できる場所が限られてるからな…随分、海外へ行ってしまったよ」

 この中では、一番小さい男がアキを見上げる。

 彼女の目の奥に、何かを見つけようとしていたのか。

 苦笑混じりに、首を横に振って顔を下げた。

「そちらは?」

 弟の一人が、絹を見る。

 車内で唯一、空気を共有しない者。

「絹です…よろしく」

 この感覚に、覚えがある。

 訓練で、まったく知らないチームに放り込まれた時と似ている。

 目で会話できる連中の中に、入った異物なのだ、自分は。

「武術はほどほど…射撃はひととおりできます」

 スキルを明確にし、お客さま状態を早く脱すること。

 皮肉だ。

 まだ、訓練の基本が身体にしみついている。

 しかし、それがいま、唯一絹に出来ること。

「こんだけの銃見て、普通に話せる日本人なんて、まともじゃないのは分かってる…よろしく、絹…歓迎するぜ」

 ここは。

 銃を扱う人間でさえ――陽の目を持っているのか。
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