ワケあり!
 行き先の話を聞いて、絹は愕然としながらも納得していた。

『養成施設』をつぶす、というのだ。

 簡単に言おう――絹のいた施設である。

「養成されている人間は、ほとんど非合法で連れてこられている。要するに、強制収容されてるわけだ」

 目元がアキに似ている、年若い男。

 外部地図、そしてどこから手に入れたのか、内部地図まで、彼が広げてみせる。

「指導教官を押さえ、彼らを解放して味方に吸収します」

 続けられた言葉に、恐ろしいほど納得する。

 こちらは、たった六人。

 一つの施設を制圧するには、全然足りない。

 しかし、向こうは一枚岩ではない。

 教官クラスを除けば、逃げることに絶望し、ただ生き残るためだけに生きている者たちだ。

 施設そのものに張り巡らされているセキュリティと、教官をなんとか出来れば、内部崩壊が導ける。

「だから、了くんのバックアップがいるのね」

 セキュリティは、内部から以外に外部接続もしてある。

 もしも、教官たち全員にトラブルが発生したら、遠隔で蟻一匹出入りできなくなるのだ。

 そのシステムをハッキングする人間が必要だった。

 だから、了は応援を呼んだのだ。

「角川がサポートに入るんだろ?」

「ああ、そういや広井んトコで働いてたな、あのバカ」

 密やかに、かわされる言葉。

 聞き覚えのある名前だったが、絹は思い出すのはやめにした。

 いまは、かつての自分の巣を睨みつけるので、精一杯。

 ただ。

 ここなら、誰よりも戦える。

 絹は――そう確信していた。
< 273 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop