ワケあり!
 翌朝、車の中は、異様な雰囲気だった。

 了はともかく、将と京の気配が険悪だ。

 二人とも、ほぼだんまりで。

 昨日の事件が、尾を引いているのだろうか。

 問うことも出来ないまま、了とだけ話をしているうちに学校についてしまう。

 その意味は、昼休みに解かれることになった。

「もー、昨日は家で大変だったんだよー」

 了との、広場でランチタイムの時だ。

 やはり広井家は、将の暴力沙汰でもめたのか。

「絹さんが、クラスメートに侮辱されたって聞いて、京兄ぃまで怒りだしてさー」

 ん?

 話の雲行きが、変だ。

 絹の話になっている。

 確かに、彼女が原因なのだが。

「あ、将兄ぃに、入学式の写真だしてもらって、僕も悪い奴の顔、覚えたからね」

 ああ。

 高尾は、ついに広井ブラザーズ全員を、敵に回したということか。

「写真見たら見たで、京兄ぃがまた怒ってさ…前にも絡んできたんだってね」

 昼休みの、ベンチ事件のことだろう。

「パパ帰ってきて、話聞いて写真見たら、パパまでそいつに怒り出して…家中、大変」

 かえって、僕が怒る隙間がなくなっちゃったよ。

 原因の自分としては、不謹慎なのだが、それには笑ってしまった。

 きっとチョウも、高尾の父を思い出したに違いない。

「でも、将くんが叱られなかったみたいで、よかった」

 チョウの様子からすると、一安心だ。

「うん、ゲンコ一発で済んでた」

 無邪気な了の言葉に、絹は軽く笑う。
< 41 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop