ワケあり!
「いま帰りましたー」
肩をコキコキ鳴らしながら、絹は自宅へと戻った。
帰りのお迎えは、助手君だ。
送り迎えが行われるのは、今日だけ、ということになっている。
歩いて通えない距離ではないし、金持ち学校だからこそ、歩いて通う意味もあるのだ――それはまた、別の話。
「やぁ、お帰り」
眼鏡の奥の瞳を、キラキラさせながら、ボスが出迎えてくれる。
「広井将と接触しました」
カバンをそこらに放り投げながら、絹はボスに報告を入れる。
「あぁ、分かってるよ…一部始終見ていたからね、よくやった」
言われて、ああ、と思い出す。
制服の胸ポケットに、ペン型の超小型カメラが設置されていたのだ。
落ちないように、ポケットにひっかけるフック部に、マイクと共に仕込んである。
学校にいる間の絹には、プライバシーなどないのだ。
一応、自分の意思で切ることは可能である。
女子トイレの中まで、見せるわけにはいかないのだから。
「でもボス…あの男、えらく食いつきがよかったですが…何か仕込みました?」
制服のジャケットを脱ぎ、居間のソファに投げかける。
「さ、さぁ…知らないなぁ」
問いかけに、眼鏡の中年男はあらぬ方を見た。
年は40前。
自宅でも常にネクタイを締め、上に白衣を羽織っている。
理系が服を着て歩くと、きっとこんな感じだろう。
「隠し事もいいですけど…仕事に障るようなことは、早めに教えといてくださいよ」
面倒くさいから。
目の端で、助手も白衣に着替え始めていた。
この家に住むのは、三人。
ボスである眼鏡が――高坂 巧。
事実上の、絹の保護者になる。
そこの二十代後半の、やや根暗そうな黒い服ばかりを着る助手が――島村。
名前は知らない。
どんなに黒いカラスな服装をしたとしても、最後にはいつも白衣を着るのが台無しな感じだ。
そして、高坂 絹。
ぶっちゃけて言えば、ボスの指示で動く――下っ端だった。
肩をコキコキ鳴らしながら、絹は自宅へと戻った。
帰りのお迎えは、助手君だ。
送り迎えが行われるのは、今日だけ、ということになっている。
歩いて通えない距離ではないし、金持ち学校だからこそ、歩いて通う意味もあるのだ――それはまた、別の話。
「やぁ、お帰り」
眼鏡の奥の瞳を、キラキラさせながら、ボスが出迎えてくれる。
「広井将と接触しました」
カバンをそこらに放り投げながら、絹はボスに報告を入れる。
「あぁ、分かってるよ…一部始終見ていたからね、よくやった」
言われて、ああ、と思い出す。
制服の胸ポケットに、ペン型の超小型カメラが設置されていたのだ。
落ちないように、ポケットにひっかけるフック部に、マイクと共に仕込んである。
学校にいる間の絹には、プライバシーなどないのだ。
一応、自分の意思で切ることは可能である。
女子トイレの中まで、見せるわけにはいかないのだから。
「でもボス…あの男、えらく食いつきがよかったですが…何か仕込みました?」
制服のジャケットを脱ぎ、居間のソファに投げかける。
「さ、さぁ…知らないなぁ」
問いかけに、眼鏡の中年男はあらぬ方を見た。
年は40前。
自宅でも常にネクタイを締め、上に白衣を羽織っている。
理系が服を着て歩くと、きっとこんな感じだろう。
「隠し事もいいですけど…仕事に障るようなことは、早めに教えといてくださいよ」
面倒くさいから。
目の端で、助手も白衣に着替え始めていた。
この家に住むのは、三人。
ボスである眼鏡が――高坂 巧。
事実上の、絹の保護者になる。
そこの二十代後半の、やや根暗そうな黒い服ばかりを着る助手が――島村。
名前は知らない。
どんなに黒いカラスな服装をしたとしても、最後にはいつも白衣を着るのが台無しな感じだ。
そして、高坂 絹。
ぶっちゃけて言えば、ボスの指示で動く――下っ端だった。