ワケあり!
「レジャーシート、大きいのを持ってきました」

 気の利く宮野のシートを、観測場所に大きく広げる。

 本当に大きい。

 この上で、宴会ができそうだ。

 天体望遠鏡の準備をしている男たちが来るまで、宮野と二人でシートの準備をしていた。

「高坂さんって…ミステリアスですね」

 また、彼女が変なことを言い出す。

 思ったことを、素直にいちいち口に出さなくてもいいのに。

「普通ですよ」

 シートが飛ばないように、隅に石を置きながら、絹は取り合わなかった。

「えっ…全然違いますよ、何だか謎めいてる…憧れます」

 だれかーっ! この子、だまらせてー!!

 絹は、シートにがっくりと膝をついた。
 
「あ、絹さん…望遠鏡、預かってきた」

 その空気を、切り裂いてくれたのは――将だった。

 暗いのでよく分からないが、えらく小型のようだ。

 筒の部分が、とても短い。

「後で、オレにもちょっと見せて」

 ぼそぼそっ。

 京の真似なのだろうか。

 彼は、とても近くで絹に耳打ちしてきた。

「わかったわ」

 同じように、秘密の音量で返す。

 ささやかな内緒話で、彼が喜ぶなら安いものだ。

「はい、宮野さんの望遠鏡…親父のだけど」

 次に、将は前回絹の使った望遠鏡を、彼女に持ってきた。

 ああ。

 持っていなかったのか。

 絹への質問は、ボスの製作発言でうやむやになってしまったのだ。

 あれ。

「じゃあ、お…お父さんの望遠鏡は?」

 いつも、心でチョウと呼んでいるクセのせいで、そう言ってしまいそうで焦った。

「ああ、君の保護者が、うちの親父にも見せようと、もう一台作ってきたらしい」

 さすが!

 さすがボス、ぬかりはない。

 絹は、心の中でガッツポーズをしていた。

 これだけ小型なら、3つもバッグに入るはずだ。

 ボスの望遠鏡の性能に、驚くがいいー。

 まだどれだけの性能か、見てもいないのに、絹は自分の手柄のように威張っていた。
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